日本古来の藍染の場合に最適な発酵液のphは、10〜10.6です。
その理由を【①発酵】【②染め】の2つの観点から解説します。
まずは、【① 発酵】の観点から。
藍染の発酵液がアルカリ性でないとダメな理由は2つあります。
ひとつは、雑菌の繁殖を抑えるため。
もうひとつは、染料の蒅(すくも)から藍を溶け出させるためです。
藍の発酵菌は、アルカリ性の液の中で繁殖できる数少ない菌です。アルカリを保つことで他の菌の増殖を抑えることができます。
経験的にphが10以上あれば大丈夫なのですが、phが10以下になると他の菌が増殖しやすくなり、phがみるみる下がってしまいます。液が中性になってしまうと藍が溶け出さなくなるため、染まりません。
このように【① 発酵】の観点からは、phの下限は10であると言えます。
次に、【② 染め】の観点から見てみましょう。
絹のきものを染め重ねて濃い色にする場合、ph9.6〜10.6の藍甕で染めるとどんどん濃くなってくれます。これよりphが高いと、せっかく染まり付いた藍の色素が藍甕の中で再び溶け出してしまうようです。
逆にphが9.6以下になると、どんどんphが下がることは、上でお伝えしたとおり。
このように【② 染め】の観点からは、ph10.6が効率よく濃い色に染める上限と言えます。
【まとめ】
藍瓶のphを10以上に保つと、雑菌の繁殖を抑えられる。
藍甕のphを10.6以下に保つと、効率よく濃色を染められる。
この2つのことから、藍染に最適なphは、10〜10.6と言えます。
phの上限は、あくまで「効率よく濃色に染める場合」の値です。phが高くても染まります。
また、仕込んでスグのph値は11〜13くらいですが、酸を加えたりしてphを強制的に下げる必要は、全くありません。それよりも、木綿や麻などの植物系繊維のものを染めていると、phは自然に低くなります。
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