藍染に使う石灰について

石灰については、未だ確固たる結論には達していません。

でも、これまでの経験と、科学的な情報を照らし合わせて気付いたことを書いてみましょう。


【石灰の種類(分類)と特徴について】

石灰は、おおよそ5つに分類できます。

・生石灰(主成分:酸化カルシウム)

・消石灰(主成分:水酸化カルシウム)

・有機石灰(1)(主成分:炭酸カルシウム)塩分を含有する

・有機石灰(2)(主成分:酸化カルシウム)ミネラルが豊富

・苦土石灰(主成分:炭酸カルシウム + 炭酸マグネシウム)


それぞれの製造方法は次の通り。

・生石灰:石灰岩(炭酸カルシウム)を焼く

・消石灰:生石灰と水を反応させる

・有機石灰(1):貝殻を粉末にする

・有機石灰(2):貝殻(炭酸カルシウム)を焼いて粉末にする

・苦土石灰:ドロマイト鉱物を焼く


このうち、藍染によく使われるのは、次の3つです。

・生石灰(一般用途:こんにゃくの凝固剤)

・消石灰(一般用途:しっくい壁の凝固剤)

・有機石灰(2)(一般用途:農地の土壌改良剤)


【石灰を藍瓶に入れる方法】

・生石灰:水(お湯)と反応させて、消石灰化(消化)した状態で藍甕に入れる

・消石灰:藍瓶に直接入れる

・有機石灰(2):藍瓶に直接入れる


僕は3種類とも使ったことがあります。使って気がついたのは、アルカリの強さと、それに伴う使用量の違いについてです。


【アルカリ助剤として藍染に使う場合の石灰の特徴と使った感想】

・生石灰:強アルカリ

・消石灰:強アルカリだけれど、保管時に湿気を吸収するとアルカリが弱くなる(効かない)

・有機石灰(2):アルカリが弱い(効かない)

※消石灰および有機石灰(2)の場合、アルカリが弱いため、大量に使わなければならないのです。ですので、アルカリ助剤としては「生石灰を消石灰化(消化)して少量使う」のが望ましいと思っています。消石灰の場合、水1ℓに溶ける量は約1.26gなので、一石五斗(270ℓ)の場合、最大で約340gになります。


余談ですが、有機石灰(2)(貝殻を焼いて粉末にしたもの)については、ミネラル補給剤として藍瓶に投与されている方もあります。


【消石灰と藍の色の関係】

消石灰を多用すると、藍の色がくすみます。なので、消石灰を使わずに藍瓶を管理するのが望ましいと考えています。


【さいごに】

石灰の種類により、水に溶ける分量(溶解度)や、溶けた水のアルカリ度(ph)が決まっているようです。こういった化学的な事象を踏まえつつ、藍の発酵液をよく観察しながら、藍瓶における石灰の役割を考察することが必要だと考えています。

イイイロ(1116.blue)

僕が手がけるのは、日本古来の藍染。日本の天然素材だけで仕込んだ発酵液に浸して染めています。はじめて染めたのは、20歳のとき。京鹿の子絞りの絹のきものを染めました。1992年から藍染を生業に。現在は、木綿・麻などの植物繊維を中心に染めています。淡い色から濃色まで自在に染め分け、ムラなくきれいに染め上げます。天然染料特有の鮮やかな色の「無地」、京都の伝統工芸「京鹿の子絞り」の2つのシリーズを展開中。

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